下顎(かがく)呼吸とは?
下顎呼吸(かがくこきゅう)とは、死期が近づいたときに見られる特徴的な呼吸の一種です。
通常、意識が低下または喪失している状態で発生し、顎を上下させながら口をパクパクと開閉するような動きを伴うのが特徴です。
これらの症状が見られる場合、本人の生命活動が終わりに近づいていることを示しており、家族は最期の時間をどう過ごすかを考える必要があります。
努力呼吸との違いは?
下顎呼吸と似た症状として「努力呼吸(どりょくこきゅう)」がありますが、両者は全く異なるものです。
努力呼吸は、呼吸困難の際に酸素を取り入れようとする体の生理的な反応です。この状態では、本人はまだ意識があり、呼吸をしようと必死に体を動かします。
一方で、下顎呼吸は臨終間際に無意識に起こる反射的な呼吸であり、ほとんどの場合、本人の意識はありません。
下顎呼吸(臨終間際) | 努力呼吸(呼吸困難時) | |
---|---|---|
発生タイミング | 死期が近いとき | 呼吸不全の進行中 |
意識の有無 | ほぼなし | あり(苦しみを感じることが多い) |
呼吸の特徴 | 顎が規則的に動く | 胸や肩が大きく動く |
呼吸音 | 小さい、またはほぼ無音 | ぜーぜー、ヒューヒューなど音がする |
必要な対応 | 看取りの準備を進める | 医療的な対処が必要 |
下顎呼吸が始まっている場合は、医療的な治療ではなく、本人が穏やかに最期を迎えられるように家族ができることを考える段階になります。
下顎呼吸時は苦しい?
家族が下顎呼吸をしているのを目の当たりにすると、「苦しそうに見える」「何かしてあげられないのか」と思うかもしれません。しかし、医学的には、本人はほとんど苦しみを感じていないと考えられています。
その理由は、体内の酸素濃度が低下し、二酸化炭素が増えることで、脳内に「エンドルフィン」という物質が分泌されるためです。エンドルフィンは「脳内麻薬」とも呼ばれ、痛みや苦しみを和らげる作用があります。結果として、本人の意識は低下し、穏やかな状態で最期を迎えることが多いのです。
このことを理解すると、周囲の家族も「本人が苦しんでいるのではないか」という不安が和らぎ、今すべきことに集中できるようになります。
下顎呼吸が始まったら亡くなるまでどれくらいか
下顎呼吸が始まると、ほとんどの場合は数時間以内に亡くなるとされています。しかし、個人差があり、まれに数日間続くこともあります。
なお、下顎呼吸が始まってから回復することはほぼありません。
下顎呼吸は、心肺機能が限界に達し、体が酸素を十分に取り込めなくなった結果として起こる呼吸です。この段階では、医学的な介入を行っても呼吸の回復はほぼ不可能とされています。
下顎(かがく)呼吸がはじまったら親族がすべきこと
下顎呼吸が始まると、残された時間はごくわずかです。この瞬間、動揺するのは当然ですが、慌てずに「今できること」を確実に行うことが、後悔のない見送りにつながります。
最期の時間は、後から振り返ったときに「もっとこうすればよかった」と思うことが多いものです。しかし、ここでお伝えする対応を落ち着いて進めることで、本人が穏やかに旅立てるだけでなく、見送る側の気持ちの整理にもなります。
この段階でできることは限られていますが、だからこそ、ここで解説する5つの対応を確実に行うことが大切です。
医師に伝える
下顎呼吸が始まると、次第に呼吸の間隔が広がり、最終的には停止します。
この段階になったら、速やかに医師に現在の状況を伝え、必要な手続きを確認しておきましょう。
特に、死亡診断書の発行は、今後の手続きに必須となるため、早めに準備することが重要です。
病院で看取る場合と、自宅で看取る場合では対応が異なるため、状況に応じた手続きを進めましょう。
親族を呼び別れの言葉を伝える
下顎呼吸が始まり、意識がないように見えても、聴覚は最後まで残るとされています。
そのため、「ありがとう」「お疲れさま」「愛しているよ」などの言葉をかけることがとても大切です。
思い出話をしたり、手を握ったり、そっと撫でたりすることで、本人に安心感を与えることができます。
この瞬間にどんな言葉をかけるかが、看取る側の心の整理にもつながるため、後悔のないように想いを伝えましょう。
葬儀屋を見つける
「まだ早いのでは?」と思うかもしれませんが、葬儀社の手配はできるだけ早く進めるべき重要な準備のひとつです。
亡くなった直後は、気持ちの整理がつかないことも多く、手続きに追われるのは辛いものです。
しかし、葬儀社の手配を後回しにすると、結果的に家族の負担が増え、「もっと早く決めておけばよかった」と後悔することになりかねません。
特に、病院で亡くなった場合、遺体を長時間安置できるわけではなく、一般的に2~3時間以内に搬送する必要があります。
そのため、葬儀社を決めるのが遅れると、病院側から早急な対応を求められ、焦って十分に比較せずに決めてしまうことになりかねません。
また、死後24時間以内は火葬ができないため、病院から火葬までの間に遺体を安置する場所も確保する必要があります。
このように、葬儀社の手配を早めに進めることで、スムーズに次の手続きに移ることができます。
いま葬儀社を決めるべき理由って?
いまは気持ちが落ち着かず、「そんな手続きに煩わされたくない」と思うのは当然のことです。
しかし、実は今すぐに検討を始めるべき理由があります。
亡くなった後は、時間との戦いになることが多く、事前に準備していなかったために慌てて決めてしまい、後悔するケースが少なくありません。
最期の時間は、人生で一度きり。
だからこそ、「もっとこうしておけばよかった」と後悔することなく、心から納得できる形で送り出したいものです。
しかし、葬儀の準備は突然やってきます。
時間がない中で決めてしまうと、理想と違う形になったり、想定外の費用が発生したりと、後悔を生む原因に。
その後悔を防ぐために、いまのうちに葬儀社を比較し、準備を整えておくことが大切です。
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妹の葬儀でお世話になりました。
打ち合わせはお電話でや自宅で行ってくださって負担が少なくとてもありがたかったです。分からない事は丁寧に説明して頂いてこちらの要望にも柔軟に対応してくださり、淡々と進めるというよりもこちらの気持ちに寄り添って提案してくださいました。
お葬式は、ただ故人を見送る儀式ではありません。
それは、「ありがとう」を伝える最後の時間であり、
故人の人生を振り返り、心からの感謝を込めて送り出す大切な場です。
しっかりと見送ることで、残された人の心にも温かな記憶が残ります。
「もっとちゃんと準備しておけばよかった…」
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